おはようございます。
いつも読んでいただきありがとうございます。
今日はセントレアについてお話する予定でしたが、ホットな話題なのでこちらを。
先日こんなニュースが出ましたね。
この件についての説明をリクエストを頂きましたので、具体的に復帰に当たってどんな手順があるのかをご説明します。
まず、「TCD」と「AD」というものがあります。
ADとはアメリカ連邦航空局が発出するものです。
民間航空機に安全上重大かつ緊急を要する不具合があると認めたときに出す検査や改善策実施の命令書で、法的な拘束力もあります。
それに則って我が国でもTCDというものを出します。
いずれも名前は「耐空性改善通報」といいます。
今回、現在運航停止されているP&Wエンジン搭載のボーイング777の運航再開について、アメリカからのADに基づき日本でTCDが出されました。
「製造国のアメリカでの調査の結果、メンテナンスを実施することで運航可能だと判断したため、我が国日本でも同様の措置をとります」ということです。
TCDを少し紹介しますと・・・
適用航空機⇓
・777-200系列型にあっては、プラット・アンド・ホイットニー式PW4074、PW4074D、PW4077、PW4077D、PW4084D、PW4090及びPW4090-3型発動機を装備したもの
・777-300系列型にあっては、プラット・アンド・ホイットニー式PW4090及びPW4098型発動機を装備したもの
その内容⇓
・エンジンのファンブレードの非破壊検査の強化
第1段低圧コンプレッサー・ブレードが破損することにより、飛行中に発動機外に破片が飛散し、発動機及び機体の損傷に至る不具合を防止するため、既に実施した場合を除き、別添FAA AD 2022-06-09(以下「AD」という。)の(f)項~(h)項及び(j)項に従って、繰り返し検査及び必要に応じ交換を実施すること。
・インレットカウルの強化及び火災防止のための改修
ファン・ブレードが破損することにより、インレット・カウル、ファン・カウル・ドア及びスラスト・リバーサー・カウルが脱落し、飛行中の発動機停止、尾翼の破損及び発動機火災が発生することで、機体の操縦性の喪失、不時着及び乗客の負傷に至る不具合を防止するため、既に実施した場合を除き、別添FAA AD 2022-06-10、FAA AD 2022-06-11(以下「AD」という。)の(f)項及び(g)項に従って、改修を実施すること。

ということで、以上の改修や検査を行ったP&Wエンジン装備のボーイング777は4月15日以降に旅客運航を再開して良い、ということになりました。
尚、4月15日を待たずとも旅客を乗せない回送運航や試験飛行などは行うことができます。(特別な許可が必要)
さて、以上が「運航を再開できる条件」です。
実際に現場ではどんな作業をするのか?
私の尊敬するベテラン整備士の方から教えていただきました。
・長期保管する航空機は、保管前後にそれぞれ点検、処理を実施する
・保管中も3日、7日、14日、30日などの間隔で作動点検やその他チェックを行う。
・運航再開にあたっては、4〜5人がかりでほぼ一日がかりの作業(外部カバーを外したり再度細部に渡って点検を行う)
・エンジン試運転を行う場合は、試運転エリアまで移動(トーイング)なくてはいけない
・特に大変なのは機内の手洗いやコーヒーメーカーなどに使う水(「上水道」のようなもの。Potable Water Systemといいます)のタンク洗浄で、殺菌消毒を経て使えるようになるまで半日ほど作業する
ということで、旅客機が長期保管に入ってもほったらかしではなく、定められた期間での点検を行い、再運航するにあたっては一日以上のタフな作業が必要ということですね。
本当に整備してくださる皆さん、ありがとうございます。
そしてパイロットの方は比較的簡単で、航空法では「乗務する航空機と同じ型式で、操縦する日から遡って90日以内に3回以上の離着陸経験が必要」となっています。
そもそもボーイング777自体はGEエンジンの機体もありますから、同じ型式=ボーイング777での離着陸経験は実機でも満たせますし、シミュレーターでもこの離着陸経験を満たすことは可能です。(各社資格管理マニュアルによる)
あとは会社によって(といってもJALは全機退役ですかね、ANAだけですね)追加のシミュレーター訓練を行う場合もあります。
ANAのP&W搭載のボーイング777がすぐに復帰するかはわかりませんが、復帰に向けてみんな頑張っています!
ON GROUNDした飛行機が再び飛び立つまでにはこんな大変な過程があることを知って頂ければと思います。
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