今日はエンジン故障の話題について。
1990年代までは、長距離旅客機といえばB747やA340などの「4発機」が主流でした。DC-10やMD-11,L1011などの「3発機」もありましたね。
その流れを変えたのが1990年代なかばに登場したB777で、ETOPSの制限もどんどん緩和されていきました。
ETOPSの詳しい説明は省きますが、現在はETOPS370があるとか??
つまり、エンジン1つで6時間以上飛ぶという前提です。
これは、航空運送事業者にとってはウェルカムな機体です。しかし、実際に飛ばすパイロットにとっては??な部分があります。
なぜ停止したかわからないのに、もう片方は停止しないと考えて6時間以上飛行ができるのか・・
私の今までの経験で、エンジンが不具合を起こしたことはほぼありません。「ほぼ」と書いたのは、数回Engine Vibrationの値が規定値を超えたケースがあった、という程度です。
エンジンの信頼性は昔と比べて格段に向上しているのです。
そんな中、もし一番クリティカルな場面でエンジン2つのうち1つが故障したら??
その場合もパイロットは冷静に飛行機を操縦し、着陸させるための訓練を積んでいます。
さて、エンジンが故障して一番困る場面とは?
それは「離陸中」です。
V1という「離陸決定速度」があります。その速度までに何か不具合が起きれば、滑走路上で停止するためにRTO操作に入ります。
そのV1を過ぎた後に「Engine Fail」が起こったら・・・・?
そのまま離陸を継続します。というのは、V1以降に離陸中止の判断をしてRTO操作をすると、オーバーランしていしまう可能性が高いからです。
実際にそんな悲しい事故が日本でも起こっています。福岡空港ガルーダ航空機離陸事故 – Wikipediaja.wikipedia.org
さて、そんな一番クリティカルな場面でエンジンが1つ故障して、上昇はできるのか?と思いますが、もちろん飛行機の性能計算にはその項目が考慮されています。
Climb Limit Weightといいます。詳しく説明するとまた膨大な量になるので省略しますが、1つのエンジンでギアを上げてからフラップを格納し始めるまでの上昇率が、双発機だと2.4%必要となっています。
つまり、そのパフォーマンスを満たすように旅客機は離陸重量を定めているので、離陸後上昇は可能です。
しかし、いつも通常の離陸コースを飛べるかというとそうではありません。
例えば、静岡を見てみましょう。

赤線を引きましたが、このSIDの場合RWY30からの離陸は1200feetまでは5.2%の上昇勾配が指定されています。
そのため、エンジンが1つの状態ではこのまま飛行はできません。
このように離陸経路上に障害物がある特定の空港では、エンジン故障の際に会社独自の離陸コースを定めている場合もあります。また、静岡のように明らかに南側は障害物がない空港だとパイロット判断ですぐ南に向かう場合もあります。
いずれにしても非常にクリティカルな場面ですので、副操縦士との間での「TAXI AND TAKEOFF BRIEFING」で詳細に打ち合わせをします。
次回はこの続きを書きたいと思います。
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