今日はStabilized Approachとゴーアラウンド(着陸やり直し)について書きます。
私自身、ゴーアラウンドを実運航で行った機会は10回もありません。
それだけレアケースなのですが、今回はその判断の重要性について書きたいと思います。
会社によって規程は様々なのですが、今世界中で重要視されているのが「Stabilized Approach」という考え方です。
具体的には、
対地1000Feetまでに
Landing Configurationにし、チェックリストも完了し、機が安定している状況をいいます。

対地1000Feetまでに上記の状態を確立できない、または対地1000Feet以降に上記の状態を逸脱する状況となれば、ゴーアラウンドしなければならない、となっています。
機長がPF(Pilot Flying)で副操縦士がPM(Pilot Monitoring)の場合が多いですが、PFが飛行機を安定した状況に持っていくために必死に操縦をして、PMはパラメーターから一定の逸脱をした場合にはコールアウトを行います。
例えばターゲットスピードに対して速度が速かったり遅かったりすると「Airspeed」とコールします。
PFが、このままではStabilized Approachの要件を継続的に満たすことができない、と判断した場合はゴーアラウンドをします。
また、PMが「ゴーアラウンド」とコールしたら、理由を問うことなく躊躇なくPFはゴーアラウンドしなければなりません。
ここは経験の差でなかなか言いにくい場合が多い中、CRMの考え方をもって安全のためにコールしたPMが咎められることはありません。
Stabilized Approachという考え方は非常に重要で、過去世界中で過度な不安定な状態から着陸を強行したゆえの事故が多発した背景から設定されました。
パイロットは技術職です。「これぐらいなら俺の腕で何とかなる」「前も何とかなったから今日もできるはず」という過信が事故を生んできました。
必ずゴーアラウンドをする基準を明確に設定することで、PFもPMも躊躇なくゴーアラウンドの判断をできるようになりました。
もちろん、パイロットが一番飛行機を着陸させたいと思っています。その中ゴーアラウンドの判断はとても厳しいものですが、最終的な安全性のために着陸を断念することはむしろ称賛されるべきことだと思っています。下手だからゴーアラウンドをするわけではありません。「あの機長はさすがだ、あの天気で他の飛行機が着陸できない中あの人だけはおりた」という考え方はもはや古いものです。
ボーイングのTechnique Manualには以下の文章が記されています。
「The decision to execute a go-around is not an indication of poor performance」
まさにそのとおりだと思います。
次回もゴーアラウンドに関することについてもう少し書きたいと思います。
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